やさしい沖縄の海

白波断つ向こうの濃い青色の海。
手前のエメラルドグリーンの海。そこに見える黒いシマシマ。
春先に沖縄旅行で来てた学生時代、海を眺めると、浅瀬に見えるシマシマがいつも気になった。
ビジュアル的にとてもかわいい。
定規でピチッと線を引いた・・・あるいはハサミできっちりカットした海苔みたいな、緑がかった黒いそんなシマシマ。
不思議な感じがした。

海が好きで、海の仕事につきたいと、東京での会社勤めをやめにして、沖縄でダイビングインストラクターの仕事についた。
色とりどりのサンゴ礁やカラフルな魚たちを見せたり、きれいな沖縄の海を見せることもしてきたけれど・・・それを上回って、格好よい海人の世界に魅了されてしまった。

海人のカッコよさ。
それは、手モリやカギなどの漁具を使って生き物と対峙する、海人の生き様だ。
自分の身体を駆使して自然の中で生きる。
人間は自然の一部であることを感じられる暮らしをしたいと願い、ここに来た。

タコトリ名人のうちに遊びにいくと、あちこちで干されているモズクの網。
この網からどのようにモズクができるのだろうか???
乗船させてもらい、たびたび写真を撮らせてもらった。
3月の写真は、モズクの網を海底に設置しているところ。
養殖もずくは、まず、苗を作るところから始まる。

海底にビニールシートを張って、海中に漂うモズクの種を採取、着床させる。
他の海藻にくっついて育つから「藻付く(もずく)」。海藻でなく、ビニールシートにくっつける。

モズクの種が着床している採苗シートをタンクに入れて、網に種付けし、種付けされた網を5〜10枚ごとにセットして、冬場、海中の苗床に設置する。

苗床で1〜2センチほど育つと、モズクに栄養が隅々まで行き渡るように、1枚づつばらして、本張りする。

冬から春先にかけ、もずくは、海中ですくすくと育つ。
それを、春先から初夏にかけ、海人たちが刈りとっていく。
すると、だんだんと黒いシマシマがなくなり、もとの青のグラデーションの沖縄の海になる。

刈り取る方法も、場所によって違いがある。

勝連のこの海人は、ヘルメット潜水といい、がっちりと面をかぶり、そこにホースを通して船上から送り込まれた空気を吸って作業する。
足ひれを履いて、ひらひらと海中を泳ぐスキューバダイビングとは異なり、足袋を履いて、体が浮かないようにウエイトも襷掛けにし、海底で砂埃を撒き散らし走り回る、大運動会の如く、超肉体労働。

県産モズクは国内生産量の99%を占めている。またモズクの一大産地、勝連地域は、県内シェア約4割の生産量を誇る。それはモズクが光合成できる透明度が高く、浅瀬で広々した海があるという証だ。

そこで種付けから収穫まで、雑草やゴミの除去など、細かな手入れを海人たちが行い、その成長を支えている。

獲物を追い求める狩人的な海人とは対照的な、「育てる漁業」。

育てると言っても、肥料や薬剤を使うのではなく、海水や太陽光など自然の栄養分を活用する。
台風が来る前に・網やモズクがながされないようにと、陸にあげたり、余計なものが付着すれば、手作業で除去したりと、芽吹く命を人間が守ってあげる。

弱い期間を人間の手で守り育てる、栽培漁業と呼んだ方がいいんじゃないかな?
モズク栽培する海人たちも、いつも心が海・自然に向いている。

また養殖モズク(私は栽培と呼びたい)でなく、天然に拘ってとり続ける海人もいる。
天然モズクのある漁場は、シマシマの海ではなく、ぐしゃっと黒ずんだ一帯がイノーにある。
天然モズクは、その名の由来の如く、アマモなどの海藻やサンゴのかけらなどに付着して育つ。
時に養殖もずくがシケで切れたものが、流れ着いて、浅瀬モズクは、増えたりも。

それを手で摘んでいく。
沖縄で養殖モズク技術が確立される前、1970年ごろまでは、天然ものを素潜りでとる海人がたくさんいたと聞いた。
そんな海がたくさんあったのだろうな。

私が動き回れるときには、獲物を狩るのが海人、だとか、追い求めるのが写真家だとか、思い込んでいた。
海にも写真にも、いろんな形があって良いのだろうということを、子供を育てるという経験を通して、考えられるようになった。

頭で考えるよりも、行動を通して、より濃く、強く、いろんな思いが湧いてきた。
多様性のある海の素晴らしさってのを、今、改めて知りたいと思っている。

浅瀬のイノーの海、それを守るリーフ(サンゴ礁)、
そして深い海と選べる沖縄の海。
山から川、
そして海につながる優しいラインがコンパクトに収まっている
沖縄というこの島の優しさ豊かさを。

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